2016年6月11日土曜日

なぜ個人消費は上向かないのか?

 最近見たニュースの中で「個人消費が伸びない」という政府関係者のコメントがあった。

 個人消費というのは景気の指標だ。
 消費が多く貯金が少ないほど、景気は好循環している、とされる。

 ならばなぜ、個人消費の増加が鈍いのか。

 それは、日本独特の賃金方式によるところが大きい。
 「年功序列」という古い方式が未だに日本を支配しているのが一つの理由だ。

 私の会社では高卒で入ってきた新入社員の基本給が「14万円」という話を聞いた。
 14万円×12か月で年収168万円である。これに残業代と夜勤手当とボーナスなどが支給される。
 概ね200~250万円程度の年収が得られることになる。

 よくよく考えてもらいたいが、「年間たったの250万円ぽっち」で、若者は何が買えるというのだろうか?
 普通車1台買えば年収の半分が消えてしまう。2台、3台買うことはできない。
 良い食事、良い家電、良い住宅。何も買うことができない。

 したがって「安いものばかり買う」ことになってしまう。
 軽自動車を買い、300円の食事をして、中国製の家電を買い、ボロボロのアパートに暮らすしかなくなるに決まってる。
 若い世代が貧しい生活を強いられているのに「個人消費が伸びない」のは、当然だと言わざるを得ない。

 ならば、日本はそんなに賃金を下げるほど「貧しい」のか? という話になる。
 企業は黒字決算をしっかり出しているし、経営危機に陥っている会社が特段多いとは言えない。

 単純に、「企業がケチなだけ」の話だ。

 若い世代に賃金を多く払うと人件費が増えるから、年功序列制度にしてさっさと転職してもらって、より若い社員を入れて黒字を増やそうっていう経営者の浅はかな考え方が根底にある。
 新入社員に「基本給で年収300万ぽっち」出せない会社が亡国を招いていると私は思う。

 重要なことは、国家がそうした現実に対して、適切な指導を進めていくということだ。
 近年になってようやく厚生労働省からの指導通達が増え、過重労働への対応が厳しくなった。これは評価すべきことだ。
 我々日本人は長年にわたって労働者軽視の国家を続けてきた。見かけの数字だけ経済大国になって中身を追い求めてこなかった。
 そしてそれが経済を停滞させていることに、ようやく気付きつつあるわけだ。

 個人消費が増えないことには別の理由もある。
 消費旺盛な若者の人口が減っていること。即ち少子化だ。

 子供を増やすことはそんなに難しいことではない。結婚してセックスすれば人口は増える。
 大して難しいことではない。他の国はちゃんと人口が増えている。
 日本人が特段EDがひどいというわけじゃないだろう。

 ならばなぜ子供の人口が増えないのか?

 「養育費が高い」ことが指摘されている。これは確かに理由の一つと言える。
 大学入学を前提として、子供一人当たりの養育費はトータルで3000万円という説もある。
 先に書いたように、若者の所得が低い状況では子供を育てるのが難しい、という事情はあるかもしれない。

 しかしそれ以上に問題なのは、「子供を複数生み育てていく」という「社会的な雰囲気の欠如」だ。
 子供は2人3人いて当たり前、4人5人育てても良い、そういう風土が日本には無い。
 CMを見てほしい。子供を2人あるいは3人出演させる広告が、世の中にどれだけあるだろうか。
 たいていのCMは1人の子供だけが出演して終わっていないだろうか。

 これは民間企業に問題があるわけではない。
 国家主導で「人口を増やしていく」という明確な計画を持って、各企業に多産へのイメージアップを求めていないことの証左である。
 かつて日本には「産めよ増やせよ」のスローガンがあり多産が奨励された時期もあった。
 現在では女性軽視のシンボルのように扱われているが、今こそ国家主導というものが必要なのではないかと感じる。
 人口が減っていくようなことがあれば、国家の経済は、持たない。

 第三の問題として、金融市場の硬直化があった。

 過去形になっているのは、この第三の問題を解決しようという取り組みが、「アベノミクス」だったからだ。
 銀行をはじめとした金融市場がとにかくリスクのない「安全な」取引を繰り返して、市場を硬直させていた。
 その解決のため、口先を含めた為替介入やインフレターゲット、マイナス金利の導入など、色々なことをやって金融市場を動かして投資を活発化させ、それによって個人消費の増大につなげていく、というものがアベノミクスだった。

 結論から言えば、アベノミクスは一定の成果を上げたと言える。

 少なくとも企業間取引や債権市場、ローンなど、銀行を介する取引に関しては、一定の刺激材料となった。
 業種によっては大きな利益を上げて黒字拡大に繋がり、賃金向上を達成できた。
 それは事実であるし評価材料だと思う。

 経済対策のために大型の予算を執行していること。また、税収の増加によって得た資金を介護分野など問題の多い業種の待遇改善に振り向けていくという発言もある。
 私としては例え一部であろうとも景気刺激を達成できたことは前向きに受け止めるべきだし、以前までの政権にはできなかったことだと思う。

 ただ、日本全体に好景気が波及しているかといえば、Noだ。

 アベノミクスを大成功であると評価するためには、国家全体の所得が大きく向上した、ということにならなければいけない。
 東京や神奈川の景気がいくら良くなっても新潟は不景気です、それでは困るのだ。
 
 最初に書いた「個人消費が上向かない」という政府のコメントは、すなわち国家全体に景気刺激が行きわたっていないこと。それを示している。

 金融市場を活発化させることは短期的な景気刺激になるが、結局国民の大半が低賃金で、人口も増えないのでは、長期的な景気改善というものは望めない。
 「貧しくなった日本」という現実を変えることは難しい。

 「なぜ個人消費が上向かないのか?」と考えることはこのように容易にできる。

 次にするべきことは、「どうやったら上向くのか?」という方法論になるだろう。
 例えば「最低賃金を上げる」というのは一つの解決策になる可能性がある。
 時間がなければ子育ては難しいものだ。人口増加のためには「共働きを減らす」という考え方もできる。

 今後の政府の動向を、しっかり見守っていこうと思っている。


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